「POD出版を利用したいけれど、入稿データをどう作ればよいかわからない」「本文と表紙は同じファイルでよいの?」と悩んでいる方もいるのではないでしょうか。
POD出版では、原稿をそのまま送るのではなく、利用するサービスの仕様に合わせて本文と表紙のデータを整える必要があります。
サイズや余白、塗り足し、フォントなどの設定に不備があると、文字が切れたり、画像がぼやけたりする可能性があります。特に表紙は、本文のページ数によって背幅が変わるため注意が必要です。
この記事では、POD出版で使用する入稿データの作り方を、本文・表紙・背幅に分けて解説します。入稿時によくある不備や販売開始までの流れも紹介するので、POD出版を検討している方は参考にしてください。
POD出版とは
PODとは「Print On Demand(プリント・オン・デマンド)」の略で、注文を受けてから必要な冊数だけ印刷・製本する仕組みです。
あらかじめ数百冊、数千冊を印刷する必要がないため、在庫を抱えずに紙の書籍を販売できます。
PODは出版契約の種類ではなく、印刷・製造方式を表す言葉です。個人がAmazon KDPなどを利用して出版する場合だけでなく、出版社が少部数の書籍や絶版本を販売するときに採用することもあります。
この記事ではPOD全般の考え方を中心に、国内で広く利用されているAmazon KDPの仕様も具体例として紹介します。
詳しい記事はこちらをご覧ください▶︎ POD出版とは?自費出版との違いや費用、Amazonで販売する流れを解説
オフセット印刷との違い
一般的な書籍では、版を作って一度に多くの部数を印刷するオフセット印刷が広く利用されています。
オフセット印刷は、一定以上の部数を印刷すると1冊あたりの費用を抑えやすく、写真や細かな色も再現しやすいことが特徴です。一方、最初にまとまった印刷費がかかり、売れ残った場合は在庫の保管や処分が必要になります。
PODでは版を作らず、デジタルデータから必要な冊数を印刷します。少部数でも始めやすい反面、部数が増えても1冊あたりの印刷費が下がりにくく、大量印刷ではオフセット印刷より割高になる場合があります。
POD出版で必要になる入稿データ
POD出版では、一般的に本文と表紙を別々のファイルとして提出します。
PDFが広く使われていますが、対応するファイル形式や判型、ページ数、塗り足しなどの条件は利用先によって異なります。制作を始める前に、テンプレートや最新の入稿ガイドを確認しましょう。
Amazon KDPでは、塗り足しを含む本文はPDFでの入稿が必要です。塗り足しがない本文は、PDFのほかDOCやDOCXなどにも対応しています。
本文データと表紙データの主な違いは、次のとおりです。
| 項目 | 本文データ | 表紙データ |
|---|---|---|
| 主な内容 | 本文・目次・奥付など | 表表紙・背表紙・裏表紙 |
| ファイル形式 | PDFが一般的 | PDFが一般的 |
| サイズ | 仕上がりサイズを基準に作成 | 背幅と塗り足しを含めて作成 |
| 背幅 | 不要 | 本文のページ数から算出 |
| 塗り足し | 端まで印刷する場合に必要 | 入稿先の指定に合わせて設定 |
| 主な注意点 | 余白・フォント・画像解像度 | 背幅・折り位置・バーコード |
| 作成する順番 | 先に完成させる | 本文のページ数確定後に完成させる |
POD出版の本文データの作り方
書籍のサイズを決める
最初に、完成後の書籍サイズである「仕上がりサイズ」を決めます。
代表的な判型には、文庫判、新書判、四六判、A5判、B5判、A4判などがあります。文章中心の小説やエッセイには文庫判や四六判、ビジネス書や実用書には四六判やA5判がよく使われます。写真集や教材では、B5判やA4判が選ばれることもあります。
原稿の完成後にサイズを変更すると、改行や改ページ、画像の配置まで調整し直さなければなりません。利用予定のサービスが希望する判型に対応していることを確かめ、最初に仕上がりサイズを設定しておきましょう。
余白を設定する
本文では、ページの上下左右に余白を設けます。
特に注意したいのが、製本したときに綴じられる内側の余白です。内側の余白が狭いと、ページを開いたときに文字が中央へ入り込み、読みにくくなります。
必要な余白は、判型やページ数、製本方法によって変わります。ページ数が多い本ほど開きにくくなるため、内側の余白を広めに取る必要があります。
本文、見出し、ページ番号などは、断裁位置に近づけすぎないように配置してください。
必要に応じて塗り足しを設定する
写真や背景色をページの端まで印刷する場合は、仕上がりサイズの外側まで画像や色を延ばす「塗り足し」が必要です。
印刷物の断裁位置には、わずかなずれが生じることがあります。仕上がり位置までしか背景を配置していないと、ページの端に紙の白色が出る可能性があります。
塗り足し幅は3mm程度を指定する印刷会社が多く、Amazon KDPでは3.2mmです。数値は入稿先の指定を優先してください。
文章だけで構成され、ページの端まで画像や背景色を配置しない場合は、塗り足しが不要なこともあります。
フォントを埋め込む
PDFを作成するときは、使用したフォントが正しく埋め込まれているか確認します。
フォントが埋め込まれていないと、入稿先の環境に同じフォントがない場合に、別の書体へ置き換わったり、文字化けしたりする可能性があります。
PDFのプロパティなどから、フォントの埋め込み状況を確認しておきましょう。あわせて、使用するフォントが印刷物への商用利用やPDFへの埋め込みに対応しているか、ライセンスも確認します。
画像の解像度と使用権を確認する
本文に写真やイラストを掲載する場合は、印刷に適した解像度が必要です。
一般的な目安は、実際に印刷する大きさで300dpi程度です。Amazon KDPでも、本文と表紙に使用する画像には300dpi以上が求められています。
解像度が低い画像を拡大して配置すると、画面上では問題がないように見えても、印刷したときに輪郭がぼやけたり、画質が粗くなったりします。インターネット上から保存した小さな画像や、メッセージアプリで圧縮された画像を使用する場合は特に注意しましょう。
画像を用意する際は、解像度だけでなく使用権も確認してください。WebサイトやSNSに掲載されている画像を、権利者の許可なく書籍へ使用することはできません。素材サイトの画像を使う場合も、書籍への利用がライセンスの範囲に含まれているかを確認します。
改ページやページ番号を整える
章の始まり、目次、奥付などの位置を確認し、不要な空白ページや改ページのずれがないかチェックします。
縦書き書籍は右開き、横書き書籍は左開きが基本です。ただし、書籍の内容や仕様によって例外もあります。
右開きと左開きでは、奇数ページと偶数ページの配置が反対になります。ページ番号が正しい位置にあるか、見開きで確認しましょう。
モノクロかカラーかを決める
本文をモノクロにするかカラーにするかも、原稿を作り始める前に決めておきます。
文章中心の小説やエッセイには、印刷費を抑えやすいモノクロが向いています。一方、写真集や絵本、作品集など、色が内容の一部になる書籍にはカラーが適しています。
一部のページにしか色を使っていなくても、書籍全体がカラー印刷として扱われることがあります。カラーが本当に必要か、グレースケールでも内容が伝わるかを検討してください。
Wordで本文データを作る方法
文章中心の書籍であれば、Microsoft Wordでも本文データを作成できます。
まず、仕上がりサイズに合わせて用紙サイズを設定し、上下左右と綴じ側の余白、文字サイズ、行間、ページ番号を整えます。
レイアウトを調整するときは、スペースや改行を繰り返して位置を合わせるのではなく、スタイルや改ページ、ヘッダー・フッターなど、Wordに備わっている機能を使いましょう。スペースや改行に頼ると、文章を修正した際に後ろのページまで崩れやすくなります。
画像を挿入する場合は、Wordの設定によって自動的に圧縮されることがあるため注意が必要です。PDFへ変換した後は、改行や改ページ、画像の位置、フォントが正しく反映されているかを全ページ確認してください。
奥付に記載する内容
奥付とは、書籍名や著者名、発行日などをまとめたページで、一般的には本文の最後に掲載します。
書籍名、著者名、発行日、発行者または出版社名、ISBN、著作権表示などを記載し、必要に応じて編集者やデザイナー、Webサイトなどの情報を加えます。
掲載する項目は出版形態によって異なります。また、奥付に記載した情報は読者にも公開されるため、自宅住所や個人の電話番号を載せる場合は慎重に判断しましょう。
POD出版の表紙データの作り方
表紙データは、表表紙・背表紙・裏表紙をつなげた1枚の展開データとして作成します。
各要素の配置は、右開き・左開きによって異なります。日本語の縦書きなどで使われる右開きでは、表表紙が左、裏表紙が右に配置されます。自己判断で配置せず、入稿先が提供しているテンプレートを確認してください。
本文のページ数から背幅を決める
背表紙の幅を「背幅」と呼びます。
背幅は、本文のページ数、用紙の厚さ、印刷方法などによって決まります。ページ数が同じでも、利用するサービスや選択した用紙によって寸法が変わる場合があります。
自己判断で計算するのではなく、入稿先が提供している表紙テンプレートや背幅計算ツールを利用しましょう。本文を修正してページ数が変わった場合は、背幅も再計算します。
Amazon KDPでは、原則として本文が79ページを超える書籍に背表紙の文字を入れられます。ページ数が少なく背幅が細い場合は、背表紙にタイトルを配置できません。
表紙にも塗り足しを付ける
自分で表紙データを作る場合は、入稿先が指定する塗り足しを設定します。
背景色や写真は塗り足し部分まで延ばし、タイトルや著者名などの重要な文字は、断裁位置や折り位置から離して配置してください。
Amazon KDPでは、表紙の外周に3.2mmの塗り足しが必要です。表紙テンプレートに示された塗り足しと安全範囲に沿ってデザインしましょう。
バーコードの配置を確認する
ISBNを使用して販売する書籍では、裏表紙にISBNを表すバーコードなどを掲載することがあります。
バーコードの扱いは、販売方法や利用サービスによって異なります。Amazon KDPでは、自分でバーコードを配置しない場合、所定の位置に自動で追加されます。表紙をデザインするときは、バーコードが入る場所に文字や重要な画像を置かないようにしましょう。
なお、すべてのPOD書籍にISBNが必要なわけではありません。ISBNの要否や取得方法は、利用するサービスや販売方法によって確認してください。
画面と印刷物の色の違いに注意する
パソコンやスマートフォンの画面で見た色と、印刷された色は完全には一致しません。
画面は光で色を表示しますが、印刷物はインクやトナーによって色を表現します。特に明るい青や緑、蛍光色に近い色は、印刷で再現しにくいことがあります。
RGBとCMYKのどちらで入稿するかも、利用先によって異なります。「印刷物だから必ずCMYK」と判断せず、指定されたカラーモードで作成してください。
コミックや画集を作る際の注意点
コミックや画集では、文章中心の書籍以上に画像の解像度や濃度が仕上がりを左右します。
細い線や薄いグレーは、印刷すると消えたり、見えにくくなったりすることがあります。モノクロ原稿では、意図しないカラー情報が残っていないかも確認しましょう。
見開きで1枚の絵を見せる場合は、中央部分が綴じ込みに入り、見えにくくなることを想定して配置します。人物の顔や文字など、重要な要素を中央ぎりぎりに置くのは避けたほうが安全です。
ページ数やファイル容量、使用できる判型も事前に確認したうえで制作を進めてください。
POD出版でよくある入稿データの不備
よくある不備の一つが、希望する判型と本文データのサイズが合っていないケースです。たとえば、A5判で販売する予定なのに、本文データがA4サイズのままでは、縮小した際に文字や余白のバランスが崩れる可能性があります。
写真や背景色をページの端まで配置しているのに、塗り足しが設定されていないケースもあります。塗り足しが不足すると、断裁後に紙の白色が見える場合があるため、指定された位置まで画像や背景を延ばしてください。
文字の位置にも注意が必要です。ページ番号や見出し、表紙のタイトルなどが仕上がり線に近すぎると、断裁時に切れたり、窮屈に見えたりします。文字やロゴなどの重要な情報は、断裁位置や折り位置から十分に離して配置しましょう。
本文を修正した後、表紙を変更し忘れるケースもあります。本文のページ数が変わると背幅も変わるため、修正後は表紙データの寸法も確認してください。
入稿前のチェックリスト
入稿前には、次の項目を確認しましょう。
- 本文と表紙のサイズ・形式が指定どおりか
- 本文のページ数と表紙の背幅が一致しているか
- 余白と塗り足しが正しく設定されているか
- 文字やロゴが断裁線や折り位置に近すぎないか
- フォントが埋め込まれ、文字化けしていないか
- 画像の解像度や使用権に問題がないか
- ページ番号、目次、空白ページに誤りがないか
- 表紙、奥付、ISBNなどの書籍情報が一致しているか
PDFに変換した後も、最初から最後まで全ページを確認します。実際の大きさで印刷して読むと、画面上では気づきにくい文字サイズや余白の問題を見つけやすくなります。
Amazon KDPへ入稿する場合は、PDFにトンボ、コメント、注釈、透かしなどが残っていないかも確認します。透明効果やレイヤーを使用している場合は、書き出し時の設定にも注意してください。
POD出版の入稿から販売までの流れ
POD出版では、最初に利用するサービスと書籍の判型、用紙、印刷色などを決めます。次に本文データを作成し、ページ数が確定してから表紙を仕上げます。
完成した本文と表紙を入稿したら、プレビューで文字や画像、ページの並びを確認します。校正刷りやサンプル本を注文できる場合は、販売前に実物を確認しておくと安心です。
校正刷りやサンプル本では、本文の文字サイズや綴じ側の読みやすさ、写真の明るさ、表紙の色、背表紙の位置などを確認します。ページ番号と目次が一致しているか、選んだ紙の厚さや質感が内容に合っているかも見ておきましょう。
問題がなければ、書籍情報や販売価格を設定して販売を開始します。POD書籍の最低販売価格や収益は、ページ数、判型、用紙、カラー設定などによって変わるため、仕様を決める段階で印刷費も確認しておきましょう。
審査の内容や販売開始までの日数も一律ではありません。修正が発生することを考え、発売希望日から逆算して余裕のあるスケジュールを組みます。
まとめ
POD出版では、本文と表紙を入稿先が指定する形式で用意します。
本文では、仕上がりサイズ、余白、塗り足し、フォント、画像解像度などの確認が必要です。表紙は、表表紙・背表紙・裏表紙をつなげた展開データとして作り、本文のページ数から算出された背幅を反映します。
ページ数や塗り足し、カラーモード、対応するファイル形式などは、利用するPODサービスによって異なります。入稿後の修正を減らすには、制作を始める前にテンプレートと仕様書を確認し、本文のページ数を確定してから表紙を仕上げることが大切です。
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