「POD出版では、1冊売れるといくら受け取れるの?」「販売価格の何%が印税になるの?」と疑問に思う方もいるのではないでしょうか。
PODとは「Print On Demand(プリント・オン・デマンド)」の略で、注文を受けてから必要な冊数だけ本を印刷・製本する方式です。Amazonが提供するサービスそのものを指す言葉ではありません。
Amazon KDPは、POD方式を利用して紙書籍を出版・販売できるサービスの一つです。一方、出版社が少部数の本を刊行するときや、既刊書を継続して販売するときにPODを採用することもあります。
そのため、POD自体に共通する印税率はありません。
個人がAmazon KDPを利用する場合は、Amazonが定める「ロイヤリティ」が適用されます。出版社がPOD方式で書籍を刊行する場合は、出版契約に基づいて「印税」が決まります。
この記事では、両者の違いや計算方法、著者が実際に受け取れる金額、さらにPODで制作した本がどこで販売されるのかについて分かりやすく解説します。
PODとAmazon KDP、自費出版の違い
POD、Amazon KDP、自費出版は、それぞれ意味が異なります。
| 言葉 | 意味 |
|---|---|
| POD | 注文後に必要な冊数を印刷・製本する方式 |
| Amazon KDP | 電子書籍やPOD方式の紙書籍を出版・販売できるサービス |
| 自費出版 | 著者が出版費用を負担する出版の枠組み |
| 商業出版 | 原則として出版社が出版費用を負担する出版の枠組み |
PODは印刷・製本の方式であり、自費出版と対立する選択肢ではありません。
例えば、次のような組み合わせがあります。
- 個人がAmazon KDPを利用し、POD方式で自費出版する
- 著者が費用を負担し、出版社のサポートを受けてPOD方式で刊行する
- 商業出版社がPOD方式で書籍を刊行する
- 自費出版の本をオフセット印刷でまとめて制作する
つまり、「PODか自費出版か」ではなく、「自費出版する本をPODとオフセット印刷のどちらで作るか」と考えるのが適切です。
POD自体に共通の印税率はない
PODは、どのように本を印刷・製本するかを表す言葉です。著者への支払条件を定める仕組みではないため、「PODなら印税は一律で何%」とは決まっていません。
著者の受取額は、主に次の条件によって変わります。
- 利用する出版・販売サービス
- 出版社との契約内容
- 書籍の販売価格
- 印税計算の基準となる金額
- 発行部数または販売部数
- 印刷費や販売手数料の負担方法
この記事では分かりやすく区別するため、Amazon KDPから支払われる金額を「ロイヤリティ」、出版社との契約に基づいて支払われる金額を「印税」と表記します。
Amazon KDPのロイヤリティはいくら?
Amazon KDPでは、POD方式を利用したペーパーバックを出版・販売できます。
Amazon.co.jpでペーパーバックを販売する場合、希望小売価格に応じて50%または60%のロイヤリティ率が適用されます。
| Amazon.co.jpでの希望小売価格 | ロイヤリティ率 |
|---|---|
| 999円以下 | 50% |
| 1,000円以上 | 60% |
ただし、希望小売価格の50%または60%が、そのまま著者の受取額になるわけではありません。
ロイヤリティ率を掛けた金額から、書籍1冊分の印刷コストが差し引かれます。
基本的な考え方は次のとおりです。
ロイヤリティ=希望小売価格×ロイヤリティ率-印刷コスト
なお、日本向けの実際のロイヤリティ計算では、消費税を差し引いた後の希望小売価格を基準として計算されます。
例えば、計算方法を分かりやすくするため、希望小売価格を1,500円、ロイヤリティ率を60%、計算上の印刷コストを500円と仮定すると、単純化した計算では次のようになります。
1,500円×60%-500円=400円
この場合、1冊販売されたときのロイヤリティは400円という計算になります。
実際の受取額を確認するときは、Amazon KDP上で表示されるロイヤリティや公式の計算ツールを確認しましょう。
この計算方法はAmazon KDPを利用する場合のものであり、すべてのPODサービスや出版社に共通するものではありません。
Amazon KDPのロイヤリティ計算例
ここでは、Amazon.co.jpでペーパーバックを販売する場合の考え方を、単純化した例で紹介します。
実際の印刷コストは、ページ数やインクの種類などによって異なります。以下の金額は、計算方法を説明するための仮定です。
希望小売価格が1,500円の場合
希望小売価格を1,500円、印刷コストを500円と仮定します。
1,000円以上のため、ロイヤリティ率は60%です。
1,500円×60%-500円=400円
単純化した計算では、販売冊数ごとのロイヤリティは次のようになります。
| 販売冊数 | ロイヤリティの合計 |
|---|---|
| 1冊 | 400円 |
| 10冊 | 4,000円 |
| 50冊 | 2万円 |
| 100冊 | 4万円 |
※実際のAmazon.co.jpでの計算では消費税の扱いなどがあるため、KDP上に表示される推定ロイヤリティをご確認ください。
希望小売価格が900円の場合
希望小売価格を900円、印刷コストを400円と仮定します。
999円以下のため、ロイヤリティ率は50%です。
900円×50%-400円=50円
単純化した計算では、1冊あたりのロイヤリティは50円です。
販売価格を低くすると購入のハードルを下げられる可能性がありますが、ロイヤリティも少なくなる場合があります。
価格の安さだけでなく、本の内容や印刷コスト、想定する読者を踏まえて設定することが大切です。
印刷コストによってロイヤリティは変わる
Amazon KDPでは、書籍1冊分の印刷コストがロイヤリティから差し引かれます。
印刷コストは、ページ数やインクの種類、販売するAmazonマーケットプレイスなどによって変わります。
例えば、希望小売価格が1,500円、ロイヤリティ率が60%の場合、単純化した計算では印刷コストによって受取額は次のように変わります。
| 印刷コスト | 1冊あたりのロイヤリティ |
|---|---|
| 400円 | 500円 |
| 500円 | 400円 |
| 600円 | 300円 |
| 700円 | 200円 |
印刷コストを抑えるために文字を詰め込みすぎたり、必要なカラー印刷を白黒に変えたりすると、本の読みやすさや魅力が損なわれる可能性があります。
価格と利益だけでなく、読者にとっての読みやすさや本の品質も考慮して仕様を決めましょう。
Amazon KDPには最低希望小売価格がある
Amazon KDPでは、印刷コストを差し引いた後もロイヤリティが残るように、ペーパーバックに最低希望小売価格が設定されます。
基本的な計算式は次のとおりです。
最低希望小売価格=印刷コスト÷ロイヤリティ率
例えば、印刷コストが600円で、適用されるロイヤリティ率が60%の場合は、次のように計算します。
600円÷60%=1,000円
この場合、最低希望小売価格は1,000円です。
ページ数が多い本やカラー印刷の本は印刷コストが高くなるため、最低希望小売価格も高くなりやすくなります。
最低希望小売価格や推定ロイヤリティは、Amazon KDPの価格設定画面や計算ツールで確認できます。
なお、最低希望小売価格はAmazon KDPが定めている条件です。PODという印刷・製本方式そのものに共通する価格設定ではありません。
出版社がPODを採用する場合の印税
出版社がPOD方式で本を刊行する場合、Amazon KDPの計算式がそのまま著者に適用されるとは限りません。
出版社との契約では、例えば次のような基準で印税が計算されます。
- 書籍の定価
- 実際の販売価格
- 発行部数
- 実際の販売部数
- 売上から所定の費用を差し引いた金額
同じ「印税率10%」でも、定価と実売価格のどちらを基準にするかによって、著者の受取額は変わります。
出版社から印税を受け取る場合の計算例
例えば、次のような契約を結んだとします。
- 書籍の定価:1,500円
- 印税率:10%
- 印税の対象:実際に販売された部数
- 販売部数:100冊
この場合、印税は次のように計算します。
1,500円×10%×100冊=15,000円
著者が受け取る印税は1万5,000円です。
ただし、これは計算方法を示すための一例です。出版社によっては、実売価格を基準にする場合や、印刷費などを差し引いた後の金額を基準にする場合もあります。
出版社へ相談するときは、次の項目を確認しましょう。
- 印税率
- 印税計算の基準となる金額
- 発行部数と販売部数のどちらを基準にするか
- 印刷コストを誰が負担するか
- 販売手数料の有無
- 売上報告の頻度
- 印税の支払時期
- 著者が自分の本を購入するときの価格
- 契約終了後の販売やデータの扱い
印税率の数字だけでなく、計算の基準や費用負担を含めて確認することが重要です。
ロイヤリティと最終的な利益は異なる
Amazon KDPから支払われるロイヤリティが、そのまま最終的な利益になるとは限りません。
出版までに次のような費用が発生している場合は、ロイヤリティ収入から差し引いて考える必要があります。
- 編集費
- 校正・校閲費
- 本文のレイアウト費
- 表紙デザイン費
- イラストや写真の制作費
- 広告宣伝費
- 出版支援サービスの利用料
制作費の回収に必要な販売冊数は、次の式で計算できます。
制作費÷1冊あたりのロイヤリティ=制作費の回収に必要な販売冊数
例えば、制作費が30万円、Amazon KDPにおける1冊あたりのロイヤリティが500円の場合、制作費を回収するには600冊の販売が必要です。
30万円÷500円=600冊
PODは、販売前に大量の在庫を用意する必要がなく、在庫負担を抑えやすい方式です。
ただし、原稿の編集や校正、デザインなどを専門家へ依頼する場合は、印刷費とは別に制作費がかかります。
1冊あたりのロイヤリティだけでなく、出版前にかかる費用と予想販売冊数も含めて収支を考えましょう。
POD出版の印税に関するよくある質問
POD出版の印税率は何%ですか?
POD自体に共通する印税率はありません。
Amazon KDPでAmazon.co.jp向けのペーパーバックを販売する場合は、希望小売価格に応じて50%または60%のロイヤリティ率が適用され、そこから印刷コストが差し引かれます。
出版社がPODを採用する場合は、出版契約に定められた印税率や計算方法が適用されます。
PODはAmazonのサービスですか?
PODはAmazonのサービスではありません。
PODは、注文を受けてから必要な冊数だけ本を印刷・製本する方式です。Amazon KDPは、POD方式を利用して紙書籍を出版・販売できるサービスの一つです。
では、PODで制作した本は実際にどこで販売されるのでしょうか。
個人がAmazon KDPを利用してPOD書籍を出版する場合、主な販売先はAmazonです。読者は通常の書籍と同じようにAmazonの商品ページから注文し、注文に応じて書籍が印刷・製本され、購入者へ届けられます。
一方、出版社や出版支援サービスを通じてPODを利用する場合も、Amazonは主要な販売先の一つです。ただし、利用する出版社や取次サービスによっては、Amazon以外のオンライン書店や書店へ販路を広げられる場合があります。
例えば、PUBFUNのPOD取次サービスでは、Amazon、三省堂書店、楽天ブックスでの取り扱いに対応しています。
そのため、「POD=Amazon」というわけではありませんが、日本でPOD書籍を出版・販売する際には、Amazonが主要な販売チャネルになるケースが多いと考えると分かりやすいでしょう。
出版社へ依頼してもPODを利用できますか?
出版社がPODに対応していれば利用できます。
出版社が少部数の本を刊行するときや、既刊書を継続して販売するときにPODを採用する場合もあります。
この場合も、PODはあくまで印刷・製本の方式であり、実際の販売先は出版社や利用するPOD取次サービスによって異なります。
Amazonを主要な販売先とするケースもあれば、利用するサービスによって楽天ブックスや三省堂書店など、複数の販売チャネルへ展開できる場合もあります。
そのため、出版社へPOD出版を相談する際には、費用や印税だけでなく、「完成した本がどこで販売されるのか」まで確認しておくことが大切です。
まとめ
PODは、注文を受けてから必要な冊数だけ本を印刷・製本する方式です。Amazon KDPは、そのPOD方式を利用できる出版・販売サービスの一つです。
POD自体に共通する印税率はありません。
Amazon KDPでペーパーバックを販売する場合は、基本的に次の考え方でロイヤリティを計算します。
ロイヤリティ=希望小売価格×ロイヤリティ率-印刷コスト
Amazon.co.jpでは、希望小売価格に応じて50%または60%のロイヤリティ率が適用されます。実際の計算では消費税の扱いなどもあるため、出版時にはKDP上で表示される推定ロイヤリティを確認しましょう。
一方、出版社がPOD方式で本を刊行する場合は、定価、実売価格、発行部数、販売部数などを基準に、出版契約に沿って印税が計算されます。
また、PODはAmazonだけの仕組みではありませんが、日本でPOD書籍を販売する場合、Amazonが主要な販売先になるケースがあります。利用する出版社やPOD取次サービスによっては、楽天ブックスや三省堂書店などへ販路を広げることも可能です。
労働教育センターでは、原稿づくりから編集・校正、デザイン、印刷・製本まで、自費出版の本づくりをサポートしています。
現在はオフセット印刷による本づくりを中心としていますが、少部数から始めたい場合など、PODでの制作についてもご要望に応じてご相談を承ります。
「原稿はあるけれど、どのように本としてまとめればよいかわからない」「自分の目的に合った出版方法を知りたい」といった段階でもご相談いただけます。
自分の原稿やアイデアを一冊の本として形にしたい方は、まずはお気軽に労働教育センターへお問い合わせください。

